第3章「ボイスサンプルのつくりかた」(後編)

(続き) 


■ ボイスサンプルは『そのまま商品になれるか』


武信:う〜ん、音楽なしで「古典の朗読」を素読みしているものなどは、たとえ上手くても、どうしてもテレビ感がなくて選べなかったですね。知名度のない人が大御所たちと同じ土俵で勝てるのかなと考えると…

狩野:その意味では、キャスティング用のボイスサンプルには、「今ある番組や、今流れているCMを読む」を収録することが、わかりやすくておすすめです。テレビじゃない原稿はディレクターにはピンとこない時が多いのです。必ずではないですけどね。

武信:「自分の良さをうまく生かせていないな」というサンプルは結構多かったんですよ、本当にもったいないのですが。たとえばDJがボイスサンプルをラジオ番組にみたててずっとフリートークで喋っていたり。盛り上げ上手だし聴きやすいんだけど…この場合もやっぱり「テレビにはそのスキルを生かせる場がない」ってことで選べなくて…

山上:逆に、どういうものが、お二人の興味をひきましたか?

武信:価値観は人それぞれですが…僕個人は「ギャップ」が好きです。例えばデザインの良い封筒で送られてきたのに開けてみたらプロフィール写真がすっごい暗そうで、ボイスサンプルを聴いてみたら「おバカキャラだった」とか…イメージを裏切ってもらえた時でした。

狩野:私は『声のインパクト』ですね。艶っぽいとか、渋いとか、ゆるキャラであっても、聴いた瞬間「なに?!」となれる人。その意味でもどんな声にレコーディングされるのかという「録音環境」は大事だと思いましたね。まだ未定ですが、第2回募集があるとしたら『キャスティング=送ったサンプルがそのまま商品になれるかどうか』を軸に考えていただければ、と思います。


■「普段から準備しているかどうか」が大事な選考ポイントに


山上:僕としては、今回のナレーター募集で「立ち上げ」から参加したことで、様々な意識が変わったように思います。考えてみればアトゥ&ベルベットの『猪鹿蝶』といっても、放っておいて仕事が空から降ってくることなんて、あるわけがないんですよね(;´д⊂)『声を売る』ためにお二人が、電話や営業に出歩くことはもちろん、CDジャケットなどデザインから作り、キャッチフレーズを考え、写真の方向性を練るなど、どうしたら制作の人に届くかを考えているんだな〜と感動しました。

狩野:すべて聴き終えてから、これはこれで大変な作業だったんですが(笑)その後のどう相手に届けるかが、私たちの本当の勝負なんです。

武信:夜な夜な会議をしましたね、あ、実はいまも練り込んでいる最中ですけど。皆さんのパワーをもらって、「猪鹿蝶」はいいスタートがきれたんじゃないかと思ってます。

狩野:まだまだこれからが本当の勝負よ(笑)

山上:マネージメント側が、どれくらいシビアに『売る』ということをとらえて、「先行投資」の形で働いているかが、僕としてもよく分かった今回のプロジェクトでした。そんなお二人の気持ちを掴むには、プレイヤー側にもきちんとした準備が必要だなと思いました。狩野さんの言う『そのまま商品になれるクオリティのサンプル』を作ることとは、プレイヤーがやらなければならない最優先のことですから。

狩野:元々「キャスティング」は、いつどんな形で何を求められるか、私たちにも予測はつかないのです。これまでの案件の中には「明日オーディションです。新しい人材いますか?」のケースだってあります。こういったスピードを要求されるキャスティングには、「普段から準備しているかどうか」が大事な選考ポイントになりますね

武信:そういう意味で『今回の結果にはあまりこだわらず、次のチャンスに向けて、表現を磨きサンプルを作っておくなどの準備を整えておいてください』と、皆さんにはエールを送りたいですね。

山上:今日はお忙しい中、ありがとうございました!!

|1|2|
 


この記事は2009/7/16配信のナレーターメルマガ(無料)vol.116 に記載されたものです。